研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

松本 啓史
MATSUMOTO Keiji
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:1998年、数理科学博士、東京大学
専門分野:量子情報

サイエンスライターによる研究紹介

「量子」と「情報」の深いレベルでの融合が始まる

私は量子情報のさまざまな側面を研究していますが、それを紹介するにあたってキーワードをあげるとすれば、「エンタングルメント」に集約されると思います。エンタングルメントとはいったい何か。これを説明するために、量子力学における「EPR の思考実験」とよばれるものを紹介します。

「空間的にまたがって存在する2 つの粒子の状態が量子的な相関(エンタングルメント)をもっていた場合、片方の粒子に対する観測の効果が、どんなに遠くはなれていても、もう一方の粒子に一瞬にして伝わってしまう」

この思考実験を考え出したアインシュタインは、「したがって、情報の伝達が光速を超える ため相対性理論と矛盾する。だから量子力学には欠陥がある」と結論付けました。しかしこれは、「誰にとっての観測か」をしっかり考えると正しくないことがわかります。観測によって変化した状態がもう一方に伝わるには、観測結果を送るだけの時間がかかるからです。とはいえ、この思考実験は大枠としては正しく、そして量子力学の不思議な特性をエレガントに言い表しています。

エンタングルメントを測る

「量子情報」という分野ができる以前には、エンタングルメントの研究はさほど進みませ んでした。たとえばその定量化すらされなかったのです。しかし情報理論的な考えを導入す ることで、定量化が可能になります。つまり、ある標準的なタスクをどれだけ達成できるかでエンタングルメントの量を測るのです。

またこの考え方は、自然につくられたエンタングル状態の有用性の指標として用いることができ、それによって、ほかの現象との定量的な関係が議論できるようになります。ただ、 この指標を具体的に計算することはとても大変であり、またその性質もあまりよくわかっていません。たとえばEPR の思考実験で、2 つの粒子を4 つにしたら量子エンタングルメントは2 倍になるのかということがわかっていません。いまは、2倍より増えないとしかいえません。

この問題は、私を含む数名の研究者によって、量子通信路容量の問題と同値であることが示されました。こちらのほうが研究が進んでいるので、その成果を量子エンタングルメント に適用することもできるでしょう。

概念レベルの融合が進む

私は学生時代を含めると、量子情報以外に、金融工学や数理生物学といったさまざまな分 野の研究会に参加し、研究者と議論してきました。とくに「境界分野」が好きで、いろいろな勉強をしたものです。するとたいていの境界分野は、ある分野で成功した手法やツールをほかの分野に持ち込むことによって成立していることに気づきました。

ところが、量子情報はそうではありません。この分野がほかの境界分野に比べてより本質的に面白いと思うのは、概念の融合がより深いレベルで進んでいるからです。たとえば、量子エンタングルメントの理論は通信の理論構成を物理に持ち込んだものですが、よくみると基本的な思想が少し物理流にアレンジされています。そこで、そのアレンジされた部分を元 の通信理論に戻して考えると、通常の通信の問題について新たな視点が現れます。

量子と情報、ひいては物理学と情報科学が深いレベルで融合することによって、新しい概念の創出がいま始まろうとしているのです。

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取材?構成 吉戸智明

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